経年変形について

経年変形

精密冷間金型等で、残留オーステナイトが時間経過と共にマルテンサイト変態して金型が膨張する現象であります。低温焼戻品は残留オーステナイトが安定しているため経年変形が発生しにくく、高温焼戻品は残留オーステナイトが不安定のため発生し易くなります。また、SKD11よりも8%Cr系冷間ダイス鋼の方が、経年変形が大きい傾向があります。対策として、サブゼロ処理、安定化処理などがあります。

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残留オーステナイト

焼入時、マルテンサイトなどへの変態は常温までの冷却では完了せず、実際には焼入組織と未変態の残留オーステナイトとの混合組織となります。残留オーステナイトが多いと硬さが出なかったり、熱処理による変寸が小さくなったりする不具合が生じますが、適度な残留オーステナイトは靭性を向上させる働きもあります。
残留オーステナイトが時間経過と共にマルテンサイト変態しますと、金型が膨張します。これが経年変形で、精密な金型では問題となります。

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サブゼロ処理

焼入後に0℃以下まで冷却し、オーステナイトの分解を促進する処理です。一般的にはドライアイス(-78℃)を使いますが、液体窒素(-196℃)などを利用する超サブゼロ処理(クライオ処理)は、さらに分解効果が高くなります。

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安定化処理

経年変形対策として施される中温度域での焼戻処理です。冷間ダイス鋼の高温焼戻温度である500℃前後は残留オーステナイトが分解しつつある温度域です。この温度域で焼戻しされた型材の残留オーステナイトは活性状態にあるので、分解し易く、経年変形が起こりやすい傾向があります。この対策として、焼戻後、一般的に250~450℃の中温焼戻しを追加実施し、残留オーステナイトを安定化させる処理です。

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