熱処理組織について

フェライト組織

1種以上の元素を含むα(アルファ)鉄、又はδ(デルタ)鉄固溶体のことで、Fe-C系では炭素を727℃で最大0.02%固溶します。結晶構造は体心立方晶であり、軟らかく、加工性に優れた性質を持っています。

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オーステナイト組織

1種以上の元素を含むγ(ガンマ)鉄固溶体のことであり、鋼を高温(通常900℃程度)に加熱した時に得られる組織です。結晶構造は面心立方晶であり、軟らかくて粘く、錆びに強く、磁石がつかない(非磁性)特性を持っています。安定して存在する温度は、合金元素量により変化し、18-8ステンレスのように、室温でオーステナイト組織の材料もあります。

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マルテンサイト組織

焼入加熱時の、元のオーステナイトと同じ化学組成を持つ体心正方晶、又は体心立方晶の準安定固溶体のことです。
オーステナイトを急冷した場合に、Ms(マルテンサイト変態開始)点以下の温度で拡散を伴わずに変態して生じる針状の組織で、硬くて脆いです。焼入れままのマルテンサイトは、非平衡で不安定な組織ですので、焼戻しを行って、適正な機械的性質を持つ焼戻しマルテンサイトに変化させます。

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ベイナイト組織

パーライト(オーステナイトの共析分解によって形成されるフェライトとセメンタイト(Fe3C)の層状集合体)が形成される温度と、マルテンサイトが形成され始める温度との間の温度間隔で起こるオーステナイトの分解によって形成される準安定構成物で、炭素がセメンタイトの形を取って、微細に析出しているフェライトからなります。

工具鋼の焼入時に空冷など、ゆっくりとした冷却により現れる組織です。冷却速度が比較的速く、およそ350℃~Ms点の間で生成するベイナイトは、針状に近い下部ベイナイト組織となります。また冷却速度が遅く、およそ350℃以上の温度で生成したベイナイトは羽毛状の上部ベイナイト組織になり、靭性が大幅に低下します。

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